湿地帯には長年かけて厚い泥の層ができていて、それらの所々には穴が開き、集まった湧水が渦を巻いていったん土の底に落ち込みまたすぐ下流でわき出ています。水流のそんな珍現象がみられるのは焼石山麓でもここだけでしょうか。うっかりしてこんな渦の穴に落ち込んだらとんでもないことになるでしょう。
水のわき出る淵にはいいかたちのイワナが二匹泳いでいました。小学校の頃、1~2年先輩の隣近所の遊び仲間たちとともに童だけで焼石にのぼり何日も小屋泊まりしたとき、よく「あかひこ」と呼んだイワナをつかまえたものです。普通のイワナとちがいヒレがオレンジ色のイワナでしたが、おそらく湧水源頭の湿地帯に棲むイワナですから、ここのイワナは「あかひこ」かもしれません。
リュウキンカ、ミズバショウ、湧水の流れ、三界山、残雪、萌え始めたブナ、これらをひきたてる青空、そしてあたたか天気、ここだけでゆっくり一日を過ごしていられるほどの楽天の地です。でも、この日は8合目の景色も楽しみにしていたので、雪割れの中に沈んで一人ふざけをしたりの後に焼石沼をめざしました。
焼石沼近くの登山道に咲くキクザキイチゲの仲間たちも色がとっても濃く鮮やか。ここでも湿地帯のミズバショウやリュウキンカをゆっくり眺め、沼へ到着は11時50分。バッケ(フキノトウ)の群落場所で一服、昼食をとり、西側山麓で最も豊富な清水の流れる沼の湧水口の水を妻への土産としてボトルに詰めました。
厚い雪に閉ざされていた沼はようやく全体をあらわすほどになり、わずかに残っている雪が岸辺ではまだ水中に氷山の底を観るようなかたちで、青白く輝く帯のようです。沼の周囲にもまだ雪の層が厚くあり、低木やチシマザサがそれに押さえられています。雪の上を簡単に沼の南側にまわり、沼と三界山の景色をたっぷりと楽しみました。ここからの鳥海山は、いつの季節もすてきで、残雪の沼や三界山といっしょにカメラにもおさめました。
▼きのうも役場での用務を済ませてから、やり残していた草刈りを、畦や道、法面と、妻と二人でブッシュ(草刈り機械)の振り回し。田植えにむけて、ひとつひとつ手順を踏んでの作業がつづき、あとは来週の代掻きを待つばかりです。