先日、山菜採りでむかった里山でのことです。斜面を歩いていたら突然、完全に夏毛色にならないノウサギの成獣が目の前から跳び出しました。
まわりはほとんど雪が消えていますから、まだ体に白さが残る今の時期のノウサギにとっては「保護色」ではなく「危険色」の毛色ということになります。これは、夜なら天敵のキツネやテン、日中なら猛禽類にさぞ狙われやすいだろうなと、立ち止まったノウサギを見て一瞬思いました。
そのノウサギはカメラを取り出す前に林の中に消えましたが、直後に私の目にとび込んできたのは、またも成獣のノウサギ。しかもそれは場所を10㍍と離れないでの2匹の死体。いずれも獣か猛禽類に狙われたのでしょう。
一匹の死体のノウサギは、襲われてから1~2日しかたっていなくて、獣が最も欲する内臓がまだ全部食べられず残されています。捕獲者はさかんと肉か内臓を食べていた最中に私に近づかれ、急いで逃げたのかもしれません。
もう一匹のノウサギの死体は内臓が食べ尽くされていますが、まだ肉の一部は残っています。いずれも、おそらく夜に、待ち伏せしていたキツネかテンに狙われた確率99㌫でしょう。なぜなら、二つの死体のすぐそばには、襲った四つ足のいきものが寝て休んだ跡が明瞭だったからです。ただし、この日の頭上には、タカの仲間がつがいで飛んでいましたから、日中に猛禽類に襲われた可能性もゼロとはいえません。
夜でも、昼でも、雪がなくなったのにこんな灰白色ですから、狙われやすい。今の時期の生死3匹のノウサギを目にして、「ノウサギが保護色に変わる節目の春と秋は、食物連鎖、弱肉強食の厳しい季節なんだな」と感じた自然のひとコマでした。