よろいの滝も水量豊富

集落からながめられる滝では村で最も高所に位置する合居川渓谷源流部の「よろいの滝」。もう初秋なのに、過ぎた冬の積雪の多さと8月の長雨で滝の水量は多く、わが集落からも肉眼で滝がよく望めます。

よろいの滝は、岩手と境をなす三界山の裾にあり、登山道などはないので沢登りの方以外は夏場は人の近づかない滝。ただし、春山の三界山登山では雪上歩きでよく通るコースです。滝の上流部は「ジショウのテイ」と村の山人が呼ぶ広くなだらかな台地。そこは県境直近の高地で、ブナの森林帯と高山植物帯が境をなす合居川・天正の滝の源流部です。

滝の左岸やや奥には、焼石連峰の名峰サンサゲェ(三界山・1381㍍)があり、ここに降った雨は、南に落ちて胆沢川から北上川へ、北に落ちて南本内川・和賀川を経てやはり北上川へ、西に落ちては合居川・成瀬川・皆瀬川を経て雄物川へと下ります。

このように三界山は3方への大きな分水嶺であるとともに、藩政時代、佐竹、伊達、南部のそれぞれの領地の境ともなる山であったことにちなんで名付けられた山ともいわれます。高峰ではありませんが春山登山の方にはとても人気のある頂きです。

若い頃に春山登山で向かった時、その頂上に古びた小さな小瓶に入れられた紙片のようなものを目にしたことがありました。それには首都圏にあるもっとも著名な国立大学の名があり「00大ワンダーフォーゲル部」と記されておりました。登山記念文字紙片入りの小瓶を目にした時は、この峰が隠れた人気の山であることをうかがわせるひとつの証のようなものと感じたものです。

▼お盆を過ぎ村は秋の風情となりました。

わが田んぼ脇では、用水路に沿って上り下りを繰り返すヤマアゲヅ(オニヤンマ)が、時々羽を休めに止まる姿を目にします。そのそばでは、ナンバアゲヅ(アキアカネ、ナツアカネとはちがうアカトンボ)が、これ以上ないというほどの真紅色の体で初秋の陽を浴びています。