バラエヂゴ熟す

俳句を詠む方々は、季節を感じとらえるのに敏な心をもたれている方が多いのでしょうが、それとは別に、幼児の時に自然と戯れる時があまりにも多かった私らガキどもは、木や草や生きものたち、とりわけ、野にある食べられるものたちの稔りの姿で季節を敏感にとらえました。

そんな子供の頃、夏の到来を強烈に感じたのはバラエヂゴ(なわしろいちご)の実。

ほかの木イチゴとちがい、生える場所をあまり選ばずどこにでもあり、実も酸味が強いものの完熟すれば案外おいしいので児たちはこのイチゴに群がりました。

ただし、このイチゴの木はほかの木イチゴとちがい地面を這うようにして伸びる特徴があります。そのため地面がいちごの葉っぱで覆われてしまい、そこにはよく見えない場所にアシナガバチの巣がよくあったもの。イチゴの実が熟す頃になると巣をまもる蜂もいっきに増え、彼らの警戒・攻撃性は最大限に強くなる時期。巣に気がつかず実をとろうとして蜂の大群にカオや頭、手足を刺された体験は多くの方がもっているでしょう。

まもなくお盆。その頃に蜂にカオを刺されると顔中が腫れて異形の人相になり、児たち同士で、カオの腫れを笑い合ったもの。それを集落では「盆つら(面)、こへぇだ(つくった)」と言いました。大人も草刈り作業などでハチに刺され「盆つら」をつくってしまうことがあり、恥ずかしくてお墓参りではカオを隠さなければならないほどで、そんな様子を可笑しがったもの。

今年は蜂の巣が比較的多し。季節便りの記憶の隅にあるバラエヂゴ-アシナガバチの痛さ-盆つら。梅雨も明けました。そういうことで「盆つら」をつくらないように気をつけねばならぬ真夏です。