過ぎた休日、隣接の岩手県西和賀町の川尻へぬける南本内川上流域、県境をまたぐ土倉林道へ車を向けました。深山の落葉後のブナ林を眺めるのが目的で、初冬になれば一度は決まって通う道です。
すでに県境や郡境へ通る村の国道、県道、市町村道は冬季閉鎖されていますが、この土倉林道は県境までならまだ通れます。この時期になれば閉鎖されなくてもすでに積雪で通れなくなることもあるのですが、今年はまだ積雪ゼロで大丈夫。
おかげで一年ぶりに、南本内川流域の初冬の山々を目にすることができました。県境で車から降り、川尻へ通ずる嶺越し林道とは別の、木材を搬出した岩手側の旧作業道跡を歩きます。この道跡は、界隈では、最も危険な箇所に開設したと思われる旧営林署建設・管理の林道跡で、一般には考えられないような切り立つ崖を削り開設された林道跡です。林道が横断する斜面は雪崩の発生箇所で、近くでは、この林道開設のずっと前の昭和38年3月初めの夜半、冬山伐採搬出の人々の宿舎が大規模なワス(表層雪崩)に襲われ、わが集落の3人(我が家の縁者も)をふくむ5人のいたましい犠牲者を出した過去があります。
見通しのよい所をさがして落葉を終えたブナの森をまずは眺めます。そこは、蟻巣山から左へ、つまり東へ連なる林や嶺、沢、それに南本内川(和賀川の支流・湯田ダムに注ぎ、やがて北上川に合流)の左右もふくめ、若い頃に冬山や春山でよく雪上を歩いたところ。
「あそこでは、こんなことがあった。むこうでは、こんなこともあった。川沿いの崖の木にはクマタカの大きな巣もあったなァ。」などと、ここでの歩きは決まって40数年ほど前の山行の諸々を思いおこしながらの、昔をしのぶ歩きとなります。
南本内川流域のカッチ(最上流部)にそびえる権四郎森(南本内岳)は、雪がうっすらと積もり、すでに完全な冬山。いつも自宅側からながめる三界山や南本内岳とは、立つ位置、見る方角がちがうので山々も形が別になって見えます。
40年を過ぎるほど前に歩いて以来、こちら側からの雪上三界山方面行きは体験していないので、「来年こそ、こちら側から三界山をまわり胆沢川流域への山行をしたいもの」と、山の地形を確認するための写真も撮りました。でも、実行に至らなかった昨年と同じように、お天気と行事などでどうなるかはわかりません。
ブナの森の道跡では、昨年もいただいたナメコが大きな倒木に食べ頃で出ていました。同じ倒木にはカノガ(ブナハリタケ)も。年々、幹の腐朽がすすむので、ナメコは昨年よりは発生量が少ないようです。
▼休日には、河川敷も散策。発生量が今年はきわめて少ないユギノシタキノゴ(雪の下きのこ・エノキタケ)や、流木などに出たナメコが所々でまだ見られます。今年のナメコはまずまずの豊作で、それもそろそろ盛りを終えようとしています。
ガマズミの実もいよいよ完熟。熟れて蔦から落ち始めたヤマブドウとあわせて、野の実の甘酸っぱさを味わえるのはそろそろ終わり。秋田でも「24日には平地に雪」の予報が出され初めましたので、地肌が見えるうちの野山散策はこれで終わりとなるかもしれません。女性たちが運営する村の直売所も、きのうで今年の営業を終え半年間の冬ごもりです。