魅力あふれるタケノコ

豪雪の村でタケノコといえば、それはモウソウチクではなくネマガリタケノコとも名がつくチシマザサのタケノコ。

タケノコは、集落の河川敷などをふくめ人里のまわりでもよく採れる山菜ですが、やはり品質上級ものは、腐葉土で肥沃なブナの森深山が発生の本場です。村の場合は、岩手との県境にあたる奥羽山脈の脊梁部が最大の群生地で、これからのシーズンともなれば、県南地方の方々や山形の新庄・最上地方の方々が夜も明けぬうちから大挙して採取に訪れます。

遠出をして、あるいは夜も明けぬうちから出かけ、しかも採取そのものもほかの山菜に比べれば体力を消耗し、笹竹で体を傷めたり目をつく危険もあるタケノコ採り。それにクマとの遭遇(タケノコ山はクマの最良の食事場)や、背丈を上回る厚い笹のジャングルで方角がわからず行き先を見失う危険も常につきまといます。

それほどの負荷や危険を多く含むタケノコ採りですが、一度魅力にとりつかれた人々は毎年のように山へ向かいます。タケノコには人々を虜にするそれほどの深い魅力があるからです。

タケノコ採りをプロとしている方々や、臨時の販売収入をめざすために山入りする方は別にして、我々のように毎年タケノコ山に向かう人が絶えないのはナゼでしょうか。それはタケノコのもつ格別のおいしさと、風格、上品さ、美観、さらに瓶詰めや缶詰に加工して冬でもおいしく食べられ、またいつでもすぐ使えるのでお土産などにも喜ばれる最適な山菜だからでしょう。

我が家でも、その瓶詰め作業が今年も妻の手で行われました。きれいに皮をむく、洗う、長さや太さを揃える、殺菌するなど、多くの手数を必要とする瓶詰めはほんとに大変な作業。店頭に並ぶ瓶詰め加工品がそんなに安値ではないのもこういう作業をみればうなずけます。加工業者さんは、人件費だけでなくそれに原料仕入れの高い費用もかかるわけですからね。

ともあれ、我が家は冬に食べる瓶詰めを今年も揃えることができました。同じタケノコでも、時期の早い出始めは軟らかく「瓶詰めするならシーズン最初のタケノコ!」が私の鉄則。写真はその瓶詰めができあがるまでのタケノコの様子です。

ところで、それほど人の心をとらえるタケノコですが、前述した条件がつきまとうように山菜採り遭難がもっとも多いのもこのタケノコ採りです。タケノコの魅力には命の危険がともなう魔力も潜んでいるということでもあります。いよいよシーズン入り、遭難がないことを切に願いながら、山岳遭難救助隊員の一人として、気がひきしまる季節ともなりました。