豪雪地方、標高500㍍ほどより上の地で、ほかの樹木に比べて圧倒的に優位な植生の範囲をしめるのはご存じのようにブナです。
時には積雪が10㍍前後になる深山尾根筋の風下にもブナはその雪に耐えて生長を続けます。ブナが豪雪に耐えて樹高を伸ばし続けられるのは、幹や枝にしなり強さがあることも大きな理由でしょう。
雪に押さえられた枝のしなり強さをよく知ることができるのが写真のようなブナの姿です。果樹をはじめ樹木の多くは積雪が引っ張る力で枝が裂け折れてしまうのですが、ブナやミズナラ、ヒメマツ(キタゴヨウ)など豪雪に耐えられる広葉樹や針葉樹は、雪がおよぼすあらゆる圧力をしなり強さでかわし生き抜いてきました。
今冬のように寒中の雨天の後や春の雪解け時など、とくに積雪が締まって下がる時、雪に押さえられていた枝も強力な引っ張り力を雪から受け、果樹などの枝折れや裂けの多くは、雪の重さとともにこの時の力で被害を受けます。しかし写真のようにブナは枝を雪に抑えられ強い引っ張り力を受けていますが、どの枝の付け根も裂けずに見事健在です。
豪雪の地でくらすには、ブナと同じように人にもしなり強さ、粘り強さ、想像以上の困苦に耐え忍ぶ力がどうしても必要になります。我々人間にも、森の生きものたちにも、ブナをはじめとする植物たちにも、そんな力が長い年月をかけて培われ体にくみ込まれてきているのかもしれません。
▼きのうも雪による被災状況を確認するために大柳地区まで村内のおおよその様子を見てまわりました。
損壊規模の大きい空き家や不在家屋の住宅やその付属物を除けば、いま利用されている建物で被害が目立つのは軒の破損です。住人はおられるのにこれほど多くの軒破損が見られるのは近年にないことです。トマト栽培や水稲育苗用のパイプハウスなど農業用施設の倒壊も著しく、これもおそらく被害規模ではここ十数年来最大規模と見られます。
今冬これまでの最大到達積雪深は、役場所在地の田子内で1月5日の201㌢、岩井川は1月11日の244㌢、椿台は1月20日の238㌢、大柳は1月11日の256㌢で、ごく普通の豪雪対策本部設置の年とそれほど変わらぬ積雪量です。
積雪量がこれより多い豪雪の年でもこれほどの被害がなかったのに今冬の被害が大きかったのは、やはり12月半ばという異例の早い時期から何日もの間休まずの一気降りが続き、除雪や雪下ろしをやりきれなかったためでしょう。そして、これはわが村だけでなく県内広くにいえることですが、高齢化と若者減少、雪下ろし除雪対応の担い手不足がいっそう進み、社会全体が豪雪に適宜対応しきれなくなっていることも遠因としてあげられると思います。
パイプハウス施設の破損は春先すぐの農作業準備にも大きな影響を与えることが直に懸念されます。高齢農家の場合は今後の営農意欲がそがれる心配も考えられます。すでに様々な面での支援策が国をはじめとして視野におかれているようですが、国、県、村、関係機関・団体にはこうした被災地の現状を見据えた支援策が求められています。
▼21日に田子内で6㌢の降雪、それ以後22日から一週間降雪ゼロが続き、今朝は乾いた舗装道路をうっすらと白くする程度のわずかの降雪となりました。積雪はかなり締まり、3月下旬~4月上旬並みの雨天や晴天だったので雪解け時のような大きなヒラ(雪崩)が多発しました。雪崩までとはならない斜面も雪の崩れで土肌が各地に現れ、寒中なのに豪雪の村は春先のような一週間を過ごすことになりました。
雨天も時々あったので里山では雪解け水も少し加わったらしく、沢も成瀬川も流量はいつもの寒中よりやや多めとなっているように見えます。
河川敷の伏流水が湧き流れる窪地も周りの雪がだいぶ解けています。ここでもほんのひとときながらも春先を思わせるように水面と土肌の面積が少し広がっています。そこには緑のクレソンがおいしそうに育ち続けています。でも、この春らしい雰囲気も迫り来る今日夕刻頃からの台風規模と予告される猛吹雪で一変してしまうはず。
▼お世話になっている方から湯沢市産のヒロッコをいただきました。厚い雪の下で育つヒロッコはセリやサクランボと並ぶ湯沢の特産物。早速酢味噌あえとサバ缶味付けの鍋にしてごちそうに。にんにくと同じで風邪などウィルス予防にも効果があるとよく言われるヒロッコ、その初モノをおいしくいただきましたので残る厳寒は元気に過ごせるでしょう。