村のマタギたちは「冬至までに、クマは穴さ、へぇる(入る)」と言い伝えてきました。ただしそれは広義の意味のこと。根雪となる時期にもよりますが我々の長年の観察では、村のまわりに生きているツキノワグマの多くは、12月はじめの一週間ほどで冬眠の穴入りをほぼ終えるとみられてきました。
先週には、岩手県境・西和賀町と隣り合わせる土倉方面の林道そばに新しい足跡を雪の上につけたクマがいたようで、同僚がその足跡写真を見せてくれました。穴入りに向かって多くのクマが移動する12月のはじめは、林道沿いの雪上にクマの足跡がもっとも多くみられる時期なのです。同僚のみた足跡そばには昔から知られる通称「ブサ穴」と呼ばれる越冬穴がありますから、きっと今頃はそこの岩穴で半年間の長期休暇をはじめたでしょう。
中にはとんでもなく冬眠の遅い個体もいますが、雪の少ない市街地そばの里山で生きるクマ以外は今週あたりでほぼ穴入りを終えるはず。
写真は、そんなクマたちが休みに入っているであろう滝ノ沢から大柳方面までの山水景色です。
今冬は人里への根雪が意外に遅く、家周りの河川敷などでは今もユギノシタキノゴ(エノキタケ)やナメラコ(ナメコ)など初冬のキノコたちが、枯れた柳や深山から洪水時に運ばれたブナの流木に輝きを増し生長しています。
山菜の中ではめずらしく、冬をむかえても葉っぱが枯れず緑色があざやかになるワサビやノゼリ、クレソンもここではいきいき。我が家の食卓では、根雪が遅いおかげで新鮮なキノコと初冬の山菜をごちそうになれる日がまだまだ続いています。