隣家出身の方の著書を読む

先日、地元集落で懇意にしていただいている先輩のKさんから「これ、読んで、みでの」と一冊の本が届けられました。本といっしょに一巻のDVD(2018年、京都で開催の一般社団法人日本パーソナルブランド協会主催のセミナーコンテストで、全国の代表7人が集まったなか、その本の著者が準優勝した際の記録)も添えられ「これも、見での」とKさんは言います。それは「セミナー講師の甲子園」といわれるその道では権威のあるコンテストのようです。

著書の名は、リーダーのための育み合う人間力(岡山ミサ子著、医学書院発行)です。この4月15日に上梓されたばかりで、著者(旧姓・備前)は村内岩井川出身の東成瀬中学校第28期生のお一人。主な経歴はご紹介の通りです。著者は愛知県看護管理協会の会長を12年間つとめた経歴もお持ちです。

岡山さんの生家は我が家と隣同士でした。このブログでも折にふれて紹介していますが、先代は大正の終わりから昭和20年代頃にかけて「気仙屋」という温泉や旅館、それに併設して気仙館という名の映画・演芸館(収容人員約300人と郷土誌は記す)を営んでおり、屋敷には「坪」と呼ばれた庭木と池のある庭園もありました。

当時「気仙屋」をつつむすべての雰囲気、人々のにぎやかな出入りの姿が私らガキにとってはとても華やかに見えたものです。(気仙屋は村の郷土誌にも記述があります。気仙の名は経営者の妻の出身地が三陸の気仙地方だったため)。後には岡山さんの父親が建設業を営んだ家筋でしたが、今はご家族の方々は村から離れられ生家はありません。

著書の内容は、これも表紙をご紹介しておりますからそれでおよその想像がつくかと思います。岡山さんは、病院の看護師、婦長、看護部長を通算40年近く体験されたうえでの「リーダー論」を、とてもわかりやすく述べられております。それは、看護師など医療関係者のみならず、多くの組織体のリーダーやリーダーとなる方々へのひとつの示唆であり、あるべき姿勢として学ぶべき内容は少なくないと思われます。

作家・井上ひさし氏の有名な言葉に「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことをあくまでゆかいに」という教えがあります。私はいつもその言葉を「訓」とあおいでいて、断片的にその何万分の一でもよいからそういう心がけで書き言葉や話し言葉にむきあいたいたいと思っています。その井上氏の言葉を思い出しながら岡山さんの著書に目を通しました。

著書は、自身の体験をもとにして豊富でかつわかりやすい語彙と文体でちりばめられていますから、啓発の著でありながらそれは一編の体験小説のようでもあります。セミナーコンテストのDVDも、発表の内容とうったえる姿に感心しつつ拝見しました。

とにかく、村出身の方の著書です。社会や職場で多様性へのとらえ方を大切にしなければならない時代です。社会におけるリーダーの資質は、時代状況にあわせてあらゆる分野で永遠に問われる課題です。そういうこともあって、ご一読をぜひおすすめいたします。コンテストの動画もネットで視聴できますから、どうぞ。