過ぎた週末、めずらしく妻から「ねげぇこど、ある。なんとか、ンド、採ってしてけねが(お願いがあるの。なんとか、ウド、採ってきてほしいの)」と、頼みごとをされた。
ある知り合いの方から「山ウドの大好きなお客さんに食べさせたくて」と、なんとかお願いをされたらしい。すでにウドなど春の山菜のほとんどはシーズンが終わり、ましてや今年は雪解けが早い。6月半ばでウドの採れるのは深山の雪崩跡に雪塊が多く残っている所に限られる。
「行ってみなければわからない」という言葉を残して、とりあえず深山渓谷のクラ(崖)を上にみる沢に入った。やはりいずこも食べ頃をすでに過ぎたウドばかり、それでもなんとか雪消の遅い箇所をめぐり必要量だけは確保できた。
直売所でも、夏の間店頭に並びつづけるミズを除けば、春の山菜で最も長く人気を保てるのはウド。ヤマウドなどは、天然モノも畑地モノも質は変わらない。とりくめる条件のある方は栽培にもっと力を入れてもいいだろう。ウドは売れ筋ナンバーワンなのだから。
村の直売所には、初夏シーズンのタケノコやミズ、ワラビに並んで、農産物のイチゴやにんにく、ホウレンソウが顔を見せるようになった。ここは豪雪の村、山菜から畑作物に直売所のカオが完全に切り替わるまではまだしばらくの日数がかかるようだ。
▼ウドをめざした同じ日の前の時刻、別の箇所の笹藪に入り、一般的な山ではシーズンも終わりに近づいたタケノコを少し背にした。
以前に記したように、この時期にタケノコを主食としているクマは、タケノコが盛りとなる場所を次から次へとわたり歩く。ちょうど、ハギミ(山菜採りのプロ)の方が盛りのタケノコが出る場所を知っていて渡り歩くように、クマもまったく同じ行動をとるのである。
そこには、必ずといっていいほどにクマの脱糞跡がみられる。ちょうど栗やドングリを食べる時に、木の下に糞をするのと同じ。これもおそらく、自分の存在を知らせるための行為なのだろう。人は声や笛などでクマに存在を気づかせるが、クマも同じように木の皮を剥いだり、糞をしたりで自分のテリトリーを他に知らせているのだろう。
このように無用な争いを避ける知恵をクマはちゃんともっている。人とクマとの出会い頭の不運な事故は、事故を未然に防止しようとする互いの防衛策がはたらかない時におきるのである。
▼2度目のたんぼの畦草刈りをきのう終えた。畦がきれいになると稲の緑がいっそうひきたつ6月半ば。村のたんぼを見渡せば、80歳を過ぎた方々の元気な草刈り作業も目に入る。高齢のみなさんのはたらきもあるから、村のたんぼの美しい景観はまもられる。