雪の少ない冬だったので、いつもなら2㍍ほどの積雪に覆われている生活用水路も、今年は多くの箇所でもう水路が露出しています。そのため、風で落下した枯れ木や落ち葉が水路や取水口に詰まりやすく、頻繁な見回りが必要となっています。
29日、その見回りついでにそばの里山をカンジキ履きで3時間ほど歩きました。
生活用水路と同じように里山の小沢もほとんどが雪に覆われていないため、この春の雪上歩きはいちいち小沢を越えることが多くなります。雪解けの早い斜面にはいずこでも、豪雪の村では早すぎるバッケが見られます。
この日の雪は表面がパサパサしていて、キツネ、テン、リス、タヌキ、カモシカ、ヤマドリなど、夜に歩いた生きものたちの足跡が雪上によく残っています。ただ、3時間ほど歩いても、カメラにおさめようとした肝心のノウサギは見られず、動き回りもたった一匹がつけた足跡だけ。いつものことながら、ノウサギの激減には驚くばかりです。
杉の林の中を歩いていたら、杉に混じって植えられたトドマツの仲間の幹に大グマの爪跡があり、樹皮が大きく剥がされています。旧い爪跡もあれば、昨年につけられた爪跡もありますから、この松の木にはクマがよく通っているようです。彼らは、杉やホオノキ、ヒメマツなどの樹皮を剥がすことがありこのブログでも幾度か紹介しています。この松の皮は幾年かにわたって剥がされています。皮を剥がす主な目的は何か、諸説ありますが、正確なことは私にはわかりません。
山中の積雪は1㍍ほど。ブナ、ミズナラ、ホオノキなどの林では、それらの木にからまってのびるヤマブドウの太い蔦にたくましさを感じます。雪が少ないのでユキツバキがもう雪上に出て、濃い緑を風に揺らしています。クリの木には、昨年秋にクマが実を食べようと枝を折り溜めた跡も。
視界のひらけるブナ、ミズナラの林を歩いていたら、キツネの足跡が集中してみられる箇所があります。立ち止まったら、雪上の一地点に広く血の滲んだ痕があります。確かめたら、オスヤマドリの尾羽の跡が軟らかな雪に残っています。それはオスヤマドリが飛翔してきて雪上に下りる時に尾羽が雪に触れてつく特有の跡です。
推測するに、これは雪上に下りたヤマドリが、下りてすぐにキツネに襲われた痕と考えられます。ヤマドリにとっては最大の不運、キツネにとっては、そうはない偶然の獲物とのうれしい出会いだったのでしょう。山を歩けば、このような命をめぐる自然界の厳しい生態のあれこれを知る場面がよくあるのです。