今冬初の雪上歩き

この季節らしくないおだやかな天気が続き「雪の少な過ぎる冬」をテレビや新聞が連日とりあげるほどになっています。

過ぎた土曜、日曜もまたまた好天、晴天。そんな雪の少ないなかでも全面滑走ができるわが村のスキー場には多くの方々が訪れ、晴天の下にひろがる山々や遠くの鳥海山をながめつつ存分の滑りを楽しんだようです。湯沢市に住むこちらの娘家族たちも初のジュネススキー場行きで、小4年の童は「同級生達が3人もいたよ」と語っていました。

その日曜日、こちらは「長引いた風邪と運動不足でナマった体を少し締めねば」と、カンジキを履き3時間ほどの雪上歩きへ。今冬初のやや時間を要した歩きです。

めざしたのは、集落と成瀬川を眼下にのぞめる向かいの山。積雪が50㌢前後(杉林の樹下はもっと少ない)ですから雪の山といってもいつもとは様子がまったくちがいます。

いつもならとっくに雪に覆われ見えなくなる小沢もまだ水流が見えるほどに露出。背の低い柴木も多くが雪にまだ押さえられませんから風の強い尾根は藪が繁って歩きにくし。下りの斜面など、カンジキごと雪とその下の藪を踏み抜いて地面まで足が沈み、カンジキを履いたままの足を藪や蔦から抜き上げるのに一苦労ということもあります。こんな雪状態の歩きでは、転倒もしやすくケガにはいつもより注意が必要となります。

さて、今冬の特徴である雪不足。何よりも雪の少なさがよくあらわれているのは、山々の尾根にこの時期ならできあがるダシ「雪庇」がほとんどゼロであること。例年、冬山の尾根に近づけばそこには万里の長城のような「雪庇の壁」が風下の東側に連なります。そのため雪庇の最も小さい「越場」をさがさなければ稜線には上がれません。それは生きものたちも同じで、私などは、ノウサギやカモシカなどの足跡をたどって彼らが歩いているそういう「越場」を見つけて尾根筋に上がることも稀にあります。

でも、今年は写真のように尾根にはそういう「雪庇の壁」がまだまったくないので、生きものたちと私はどこからでも自由に上がれます。

雪が少く雪庇もなしですから、例年なら雪崩や雪庇の崩落を怖れて踏み込めない所まで今年は行けます。眺望のもっともよい所から雪の少な過ぎる集落と川を見下ろし、その後にはさらに雪の少ない稜線を藪こぎ(こんなことも初めて)してこの日の最も高い所からスキー場方面をながめました。途中では大沢と元山沢境の尾根上に真白き山容の鳥海山も目に。県境の焼石連峰は晴れ空に輝き、絶好のスキー日和を楽しむ人々の姿も目に入ります。

この日は期待した生きものたちとの出会いはなし。カモシカが食べ物を反すうしながら雪上に座っていた跡、クマが秋にドングリを食べようと枝を折った跡、畑のそばでテンがカボチャを食べたらしい跡など、跡、跡、跡を目にしただけでした。