花の百名山、初夏の焼石山行(その2)

いつもの年より残雪が多いということでは、春の花との出会いだけでなく、その雪が思わぬ瞬間を私たちにもたらしてくれました。それは、大きなツキノワグマ(オスでしょう)を目前でゆっくりながめられたという出会いです。

クマが私の視野にはいったのは、8合目がまもなくのブナの林が終わりになろうとする登山道でのこと。ここら辺は、名峰三界山の裾を決まって眺める地点で、過去に幾度も雪の上をむかった頂上をながめ、沢をまたいで裾に残る大量の雪渓に目をやったら、雪と笹の縁に黒いモノが。「ん、おがしい、黒い。あれは、クマ」とすぐにわかりました。

クマを目撃のその直前も含め、歩き開始からクマ除けに大声を何度もあげてきました。ですから、クマはこちらの声などとっくに聞こえるし我々の姿もとうに確認できているはずなのに、驚くとか、慌てるとか、逃げるとか、人の気配に動ずる様子は彼にまったくなし。

長年クマ狩りをしてきたこちらの目にうつるこのクマの大きさはツキノワとしては最大級。前日だったか、横手公園でオリ捕獲されたオスグマは体重120㎏ということでした。秋とはちがい初夏のツキノワグマとしては最大級でしょうが、今、こちらの目前にいるクマも、それに勝るとも劣らぬ大きさです。まちがいなく、めったに見ることのない巨大なオスのツキノワグマです。彼は、ゆうゆうと雪渓を移動しながら、鼻先で雪を掘ったり、手で雪を掘ったりしながらゆっくりゆっくり歩み、やがて笹藪の中に消えました。

車のそばを横切るクマの親子を見たり、国道そばで残雪上を走るクマを見たことのある娘も、大自然の懐に生きる大グマのゆったりした動きに心を奪われたらしく「オリで捕獲のクマとちがい、なんだが、森の王者みたい」という旨の言葉を発していました。こちらも同感で、人がそばにいるのに、あれほど堂々としたうごきの巨グマにお目にかかる機会はそんなにない体験です。カメラを持ち替えて動画にもしましたが、帰って再生したら、手持ちもあって画面が震えていました。思わぬ出会いのうれしさに心も震えていたのです。

太公望さんとイワナ、巨大グマ、そんな出会いのお土産を詰め込みながら、焼石沼に到着。予報どおりの天気とはならず空はだんだん雲が厚くなり、東からの風が強くなってきました。東風なのに残雪もあってか風は冷たく、休みなしでそそくさと頂上に向かいました。

9合目分岐焼石神社までの区間も残雪が多く、春の花と初夏の花が同居で、それは頂上から横岳方面、姥石平まで周囲一帯同じの様子です。焼石神社で諸々の安寧をお祈りし、自然庭園の岩上でひときわ映えるチングルマやミヤマダイコンソウ、ミツバオウレン、それにミヤマキンバイでしょうか?等々をゆっくりながめ、頂上着は10時ちょうどでした。

▼きのうは6月農業委員会の総会日。現任期の委員14名にとって最後の総会となりました。この任期限りで引退を決めていた委員が多く、幾人かは最適化推進委員として選任される運びですが、私も含め完全に引退が7人いて、感慨の雰囲気漂う総会となりました。