慰霊

お盆が送られた。1月から数えれば1年の半分は6月。なのに、雪国にくらす私らなどは、お盆が一年の半分区切り目で、8月半ばを過ぎれば、頭をめぐる思案はもう秋を描き、白い冬を早くもおもうようになる。季節の大分けは二つ、その境目はお盆なのである。

お盆入り前の7日はお墓の掃除日。そして13日、それぞれのご先祖たちはきれいにされたお墓からいったんは自宅へ帰り、旬のごちそうをいただき、家をまもる家族たちを見つめ、時ににぎやかな、時に静かな家族の話し声を聞いてまた16日お墓へ戻った。

CIMG5696-1お盆といえば霊。人の霊とは別のことだが、集落には、地元の狩人(半生業とした方もいたが多数は趣味の狩猟)たちによって平成13年に建立された鳥獣慰霊碑がある。生きものたちと狩りという技をまみえてつながった者たちなので、「霊に意をあらわしたい」という発意で碑は建立された。

人と同じように、鳥や獣にも霊を感ずるという狩人たちの心がこうした行動につながったものである。あまりにも多くの鳥獣たちの命(命をとる)とかかわる行いをするということが、慰霊碑建立の発意を促したとでもいえるだろうか。

碑に添える言葉はいくつかを用意し、それらのなかでみんなに選んでもらったのが「奥羽の大地に生きた幾多の生きものたちよ われら狩り人 先達の思いをこめ ここに慰霊の碑を建立す」であった。この言葉は、今に生きる我々だけでなく、鳥獣をくらしの糧として獣たちとまみえ、我々を教えた本格マタギと呼んでよいだろう先達への思いもこめられたものである。

実は、クマの出没が村内にも相次ぎ、今年は例年よりその数がはるかに多いようで、重里台に設置されたオリでも先日1頭が捕獲され、今朝には滝ノ沢の果樹園地でも1頭がやはりオリに入ったとの報があった。近隣のまちやむらでもすでに多くのクマがオリで捕獲されている。猟ではなくオリなのである。

ほかならわかるが村でもオリで捕獲されたクマをも慰霊することになるとは、先達はもちろん猟を始めた頃の我々の思案にもなかったこと。お盆を前に、慰霊碑のまわりの草を刈り掃除しながら、クマをめぐる時代状況の変化を想い複雑な心持ちにかられたことを記したところである。