「漬け物は雪のある寒いうちに食べる」が、いわば常識。春になればまた新鮮な山菜が出て、野にも畑にも食の材料がいっぱいになるし、なによりも暖かくなって漬け物がスカグ(すっぱく)なるから。
そういうことで、「早ぐ、くぁねば(食わなければ)」と、わが家の塩蔵食べ物がこのところ次から次へと顔を変え食卓にのぼっています。
今回はワラビとサグ(エゾニュウなど)、そして私がキノコでは最もおいしい横綱格のひとつとしてあげるクリカラモダシ(クリフウセンタケ)がいよいよ登場です。昨年はこのきのこが大のつく豊作でしたから。(秋の写真)
ワラビは納豆汁へ、サグとキノコはおでん風デゴ(だいこん)汁 や味噌汁でたくわえていた春と秋の野の味を楽しみます。キノコと同じで山菜も土地によって好みに大きなちがいがあるようで、サグやクリカラモダシもその典型にあげられる山菜とキノコ。
わが村でのサグは山菜中の山菜として食卓にのぼりますが、同じ雪国、東北でもほとんど食べないところもあります。逆にクリカラモダシは、村では毒キノコとの区別がわずらわしいか、ややこしくてでしょう、食べる方はごくごく稀、ほんの少数。
特徴のあるキノコなので採取の経験が豊かだと毒キノコとの見分けはすぐにつきますが、やはり、クリカラモダシは成長するとだんだん似たような猛毒キノコとの区別がむずかしくなるようです。だから村でも、こんなにおいしいキノコなのに警戒、敬遠されつづけている様子。実際、それが正解でしょう。わからないものは食べないがキノコ食の鉄則です。
一定の授業料(微少量の試食を繰り返すなど)を払わないと、おいしい果実にはなかなかたどりつけない、手にできない、この教えはキノコの美食を得るにも同じ事がいえるようで、現場を数踏まないと安心した判断はできないものです。
いつもご紹介していますが、クリカラモダシという村の方言名は、わが家の隣の亡きTおばあさん(山菜、キノコ採りが生業の方)からお聞きしたもの。村のその道のプロたちは、やはり知っていたのです。いかにも毒々しいタマゴタケをタマゴモダシと呼んでおいしく食べたように。東北の縄文遺跡からはキノコ食をうかがう跡もあるらしいですが、こういう教えは縄文の時代、あるいはそれ以前からこの村に棲む人類が知っていて、今に伝わっているのでしょうか。クマも時にキノコを食べます。この雪国人類が、「これは食べられる、これは毒」と区別してのキノコ食はいつの頃からはじまったのか、クリカラモダシやタマゴモダシをみればそんな悠久の昔にまで思いがついおよびます。先人は勇気があった。
▼優に2㍍越え、これが今冬のほぼ最大積雪深と思いたいわがたんぼのヤマユリが咲く土手。ここには川筋からまともに西の風が吹きつけるため、おもしろい雪庇が毎年できます。