初秋のキノコたちをほんの少し

おとといは、早朝5時から田んぼの病害虫防除で2回目の薬剤散布を行いました。

その後、いつものように役場で日常の仕事を済ませ、昼近くになって合居川渓谷のブナの森に滝をのぼり向かいました。山入は初秋のキノコたちを採る、撮るが目的です。

目的のキノコは、今年は発生が遅いとされているトビダゲ(トンビマイタケ)と、ノギウヂ(エゾハリタケ)の2種。キノコをめざしては今年初の少し本格的な谷入りです。

2つのキノコともブナの森の大樹(老樹)に発生するキノコで、エゾハリタケはブナの幹に、トンビマイタケはブナの根元に顔を出します。いずれのキノコも木材腐朽菌なので、このキノコにとりつかれるのはたいていがブナの高齢樹。キノコが出るようになればそれほど長く経たないうちに枯れるか倒れるかでその幹は命を終えます。

さてお目当てのキノコですが、こちらが通う枯れ死んだブナの根元にはほんの少しのトンビマイタケがあるだけでした。それも今の時期にはめずらしくわずかの幼菌と成菌がちょっぴりだけ。やはり今年は発生が大きく遅れたようです。

一方のエゾハリタケ、めざしたブナの大樹に生えるのは同じエゾハリタケでも晩生なので写真だけを撮る目的で立ち寄りました。予想したようにこちらは今ようやく顔を出したばかり。エゾハリタケ本来のスケールの大きな姿にはほど遠い状態です。2箇所に出ていて、これをもうひと月ほど生長させれば、写真にあるキノコだけで10㌔以上の大きな塊となるはず。それまでオガシテ(大きくさせて)、撮り、採りの日を待とうと思います。

いつも記すように、村人がよく言う「山の見置きと、アネコ(娘さん)の見置きはアデにならん」となるかもしれませんが、山はみんなのもの、それもまた楽しです。もし一ヶ月後にどなたも立ち寄らなければまた「撮る」ことができ、その際は「採る」こともできるでしょう。そのときは今回の写真と比べて見てください。一ヶ月でどれほど生長したか比較もおもしろいはずです。

ブナの森では、タマゴモダシ(タマゴタケ)やチンダゲ(チチタケ)も目に。チチタケは、採って触っただけで傘や柄からネトネトした乳液がじわじわと滲み出てきます。おもしろい特徴をもった食べられるキノコです。姿が毒キノコの象徴のようなタマゴタケもすぐれた食菌とされます。どちらも私は好んで食べませんが。

今年は渓谷の水量多し。帰路には「盆ボギ(盆フキ)をごちそうになろうか」と、おいしそうなフキを選りすぐって少し切取り背負いました。集落では昔から「盆には深山ブナの森のホギ(フキ)を食す」という慣わしがありました。今はそんな食風習はほとんどなくなりましたが、少々遅れて仏壇にもトビダゲと盆ボギを供えたところです。帰り道ではまた足下にマムシが。今度も危なく踏むところでした。山歩きはすべてに用心用心です。