まだワタスゲの花が盛りだった初夏の頃、「ある目的があって、栗駒・須川高原の昭和湖まで歩いた」ということをここに記したことがありました。
きのう、というよりも実際はおととい深夜からきのう早朝にかけてとなりますが、その目的を果たすことができました。
目的は単純「栗駒山頂で日の出を拝む」こと。その山頂からは、眺望がきけば北上山地を越えた太平洋まで眼にとまるときがあるという栗駒山で、地元でありながら、私はまだこの山頂からの日の出を見たことがありません。
登る機会の多い岩井川地元の山焼石岳では日の出も幾度かながめていますが、栗駒は須川温泉までなら頻繁に通うものの、登山そのものは回数が少なく、もちろん夜の歩きもなし。
山人にとってご来光を拝むはなによりのよろこび。遠くに行かなくても、地元の村で気軽にすばらしい日の出を拝めるのですから、「よし、久しぶりに朝日を拝むか。まずは焼石、そして栗駒」と、先年、焼石岳からのご来光拝みを計画し夜中の登山を試みました。ところが、そのときは頂上間際で雨に見舞われ残念無念で下山していました。
焼石の道中は長いのですが、栗駒なら駐車場からおよそ2時間で頂上にたどりつくことができます。ということはご来光拝観の山登りなら栗駒はうってつけの山、ということに今頃になって思案が及んだのです。麓の村にいながら、今頃になってです。
こういう山登りは、周到な計画を事前からたててなどということでは無理。とにかく一日~二日後の天気予報と仕事の都合をみて、「即、明日か明後日決行」というスケジュールの成り立つ方でないとできないこと。もちろん、ほぼ徹夜行動の覚悟です。
おとといは、夕食後、夜中の11時半に自宅を発ち、登山開始は午前零時少し過ぎ。お月様が満月に近く、お星様も満天にきらきら。昭和湖で湖水に輝く月光と上弦の月もふくめ、頂上到着までに眺める月の美しさはひとしおでした。こちらはそういう景観を写し撮る技がありませんが、同行のBさんはきっと見応えのある瞬間を切り撮っているはずです。
頂上到着は午前2時30分頃。秣岳からの分岐を過ぎてからは登山道にややかぶさる低木の夜露に濡れ、内からも汗をじっとりとかいたので、まずは肌着を取り替え、寒さにそなえて雨合羽や防寒に重ね着。緩やかな風ですが、さすがに頂上は寒し。そのとき、私の山歩き仲間Aさんの入れてくれた温かい紅茶のそのありがたくおいしかったこと。
ここでも西に沈みはじめたお月様の美しさに大満足。日の出でなく、まずは名残のお月様に感謝の山行です。みなさん、月にみとれ、星にみとれ、時折の流星に歓声。あおむけで天をのぞむ方も。「あっ、光がピカピカしないからあれは人工衛星だ。国際宇宙ステーションかも」などと、北から南にスーと動く灯りを観たりで、日の出の時を待ちました。