花の百名山・焼石岳(その3)

花の百名山を象徴するうちのひとつタゲの沼(焼石沼)の草原は雪解け直後で花がほとんどない。今ならミネザクラが素敵なのだが、それもまだつぼみにすらなっていない。こんな時もあるのだと、三界山を背景に芽吹きが見られないそのミネザクラにカメラをむけた。

5分ほどの休みで沼のほとりを発ち、リュウキンカとミズバショウを眺めて歩き始めたらいきなりクマの新しい糞がある。まわりはクマの大好きなサグ(エゾニュウ・ミヤマシシウド)のまだ軟らかな茎やミズバショウがいっぱいだからここら辺に居着くクマは多い。糞はそのうちの一頭のものだろう。

クマ公は、おそらく登山道から遠くない藪で休んでいるのだろう。ラジオの音を上げ、時々声を出して進む。ここからの今の季節の道は、シラネアオイ、ミネザクラ、ミヤマキンバイなどを主とする花の道となる。三界山と焼石沼を背景の花景色が美しく、何度も振り返りながら9合目分岐、タゲの神社(焼石神社)に着く。新型コロナ禍、諸々の安寧を願い今年初の参拝を済ませて頂上をめざす。ここで頂上方面を眺めたら、こちらの先を行く登山者が一人見える。岩手側3コースのいずれかを来て周回し頂上に向かう方らしい。

岩にハイマツの濃い緑、そこに花盛りのミネザクラ。焼石のなかでも自然の庭園として最も美しい場所を通る。いつもなら、そろそろ岩のまにまに咲くチングルマが美しいところだが、それは花どころか蕾すら見えない。

頂上には10時着。写真を撮りながらとはいえ歩き始めから4時間半もかかっている。すずこやの森側からだとやはり遠い。ここまで来たら足にやや疲れを感じた。

雲で遠望は隠され岩手山や早池峰、月山など東北の名山は望めぬが、栗駒など近場の山々は雲間から時折姿をあらわす。頂上はやや風はあるものの寒くはなく、まずは南の森(西焼石岳)やサンサゲェ(三界山)、権四郎森(ごんしろうもり・南本内岳)、手倉越(仙北街道)の尾根など360度の展望を楽しむ。

この季節の頂上の眺めで魅力のあるのはなんといっても雪渓だ。豪雪の冬だったので雪渓も雪田もいつもの同じ時期より雪ははるかに多いように見える。頂上東部直下の裾にも雪渓が大きくあり、登山道を下らなくてもほぼ雪上だけですぐ足下から姥石平の周回コース、南本内川上流部にたどり着けるほどだ。

焼石連峰のうちでは残雪が最も多い箇所のひとつ南の森(みなみのもり・今は西焼石岳という名がついている山)裾の雪渓は、景色としては格段の美しさをもつ。その下の湿地も雪が多い。焼石岳よりも山体がぐんと大きく秋田側から見てよく焼石岳とまちがえられるこの山へは登山道がない。雪山歩きや、山スキーを楽しむにはあつらえむきの嶺だ。10数年前に雪の上をのぼって以後この頂には立っていない。

こちらと同じ時刻に頂上にいた登山者は、岩手側から登ってきた若い男女の連れだけ。彼らはすぐに下った。こちらも自宅に電話を入れ、頂上のシラネアオイやミヤマキンバイを眺めながら15分ほど休んで岩手側コースの姥石平・横岳方面へ下りる。その先には、初夏の花の百名山を象徴するユキワリコザクラ、ヒナザクラ、ハクサンイチゲの楽しみが待っている。

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