スナヤツメ産卵期

金曜日正午で村議会6月定例会議の一般質問通告が締め切られました。通告は3議員から出され、午前中にその内容を確かめました。一般質問は11日に行われます。

▼過ぎた週末、村の直売所運営に参加している妻が「タケノコが出なくて困った」と嘆いているのを小耳に挟みました。

村の特産夏秋トマトなど夏野菜が出る前のこの直売所の「顔」は山菜であり、今の季節だとその主役はタケノコ、それにワラビです。ワラビは里山でも比較的手軽に採れますし、また村では転作田にもたくさん栽培されていてこの品集めは心配なし。しかし、ネマガリタケノコはブナの森深山まで出かけなければならず(須川高原なら道路そばでも採れますが)、自家用は別にして「販売目的」ということで山入りする方はごく限られています。

しかも、山菜採りを生業としている方は、昔からなじみの仲買人さんや町の朝市などで売る方がほとんどで、直売所にまでタケノコを持ち込める方はごくわずかの方々のよう。そのごくわずかの方々も、今年は暖冬少雪の割にはタケノコの出がそれほど早くなかったり、高齢化や仕事など様々な都合で山に行けなかったり、国道が閉鎖されていたりでどうしても山への足が遠のき、そうした諸々のことが重なって品薄ばかりか「タケノコがない」という日もあるとのことらしいのです。

「タケノコがないので、少ないのでお客さんに断り続けてばかり、申し訳なくて。直売所のために、タケノコがほしい」というつぶやき声をそばで何度も聞いたら、これはもう黙ってはいられません。旬のタケノコがないとはなんとも情けなし、それでは山村の直売所の名がすたるというもの。自家用は別にして、売るために採るのはここ数年中断していたこちらでしたが、そういう事情なので「直売所のカオ」を揃えてやらねばと、急きょこの週末は「やむを得ぬ、店援助のタケノコ採り」に向かいました。

天気がよかったので焼石岳の登山者もかなりいたらしく、でかけた村のタケノコ山入り口の駐車場は車でいっぱい。山に入ったら、あちらこちから年季の入った男女の声らしい「ホーホー」の叫び声や、時にはけたたましい爆竹の音が聞こえます。あいかわらずクマ公のタケノコ食べ跡は随所に見られます。ようやくタケノコ山は、「雪解けの遅い箇所を残して、どこでも、誰でも採れる」真っ盛りの季節入りです。こちらも金曜午後と土曜午前の2日間、それぞれ正味1時間半ほどで30数㌔をすぐに採り終え早々と帰宅。おととい、きのうは、そのタケノコが直売所のちょっとしたカオ役をつとめたようです。

ブナ林には、昨年秋に赤く色づいたヒメアオキの実が雪の下で冬を越し、まもなく落ちそうな真紅に熟した実をいっぱいつけています。

▼土曜日、山から帰っての午後は、訪れた童とともに自宅前川原や小川で自然観察と魚獲りです。この日の観察の目玉は、蟻地獄とスナメロ(スナヤツメ)の産卵床つくり。

蟻地獄では、「地獄」でアリや蜘蛛がすばやく地獄の主(ウスバカゲロウの幼虫)に捕らえられる様子を観察。捕まえられたアリや蜘蛛たちはたちまちのうちに動けなくなってしまうのですから、これにはいつものことながらたまげてしまいます。何か体がマヒする毒液でも「主」は出すのでしょうか。

「蟻地獄って、ウスバカゲロウの幼虫だよ」と言う童が、餌食となった蜘蛛といっしょに穴の主を手のひらにのせたら、地獄の住み処の主は前進ではなくあとずさりの動きをします。この姿で幼虫なのも不思議ですが、その動きもおもしろいものです。円錐地獄の底にいて虫たちを地獄に引きずり込むのですから、あとずさりというわけです。虫が地獄のしかけに落ちたとわかったらすぐに反応して、地獄の主は砂をパッパッと噴射、さらにスリバチ状の地獄から虫が逃げられなくする仕業も二人でジッと観察。その技はたいしたもの。

童は、同じ川原でこんどは「これ、カゲロウの成虫だよね」と羽根のついた虫をつかんでもいました。ウスバカゲロウと似てはいますが、カゲロウの幼虫は陸上に棲むウスバカゲロウの幼虫とは別で水棲です。生きものって、なかなか見分けがむずかしいですね。

さてスナメロ(スナヤツメ)です。「あっ、はじめヒルかと思った」と成瀬川支流の岩井沢の瀬を見てスナヤツメを先に発見したのは童。スナヤツメは、礫のある瀬にイワナの産卵よりもっとていねいな自らの行為で窪みをつくり、そこに産卵するのでしょう。その窪みができあがると何匹もの群れの塊が見られるようになります。この日は、2つの小さな窪みで、それぞれまだ一匹ずつのスナヤツメが盛んに窪みつくりをしています。

もう少し時がたてば、窪みには塊となった群れ(やはり雄が多いのかな)の姿が見られるでしょう。産卵を終えれば鮭と同じように彼らの命は絶えるのです。群れができたころに見かけられればまたご紹介します。このスナメロ、むかしは「ドジョウより脂っこくて美味い」と、地元でも我が家でも好んで食べたもの。今は、ギャバヂ(アカザ)と同じで絶滅危惧種になってしまいました。でも、村の成瀬川ではほとんど見かけなくなったギャバヂとちがい、まだスナメロはかろうじて目に入ります。

生きものたちの観察を続けていた川原や小川の砂地には様々な動物たちの足跡も見られます。「オッ」と思わず声をあげたのは大きなクマの足跡。しかも新しい。川を渡って住宅近くのここら辺をよく往き来しているらしい跡です。

▼この日の夕方には、近くの町場に住む村出身の同級生から「いいワラビあった。これ、食べての」と村の山で採れた立派なワラビを頂きました。田んぼにワラビ栽培をしているこちらですから野山のワラビはここしばらく食べることがありませんでした。ワラビは最高級の品質で、色もお見事。(食べものは、色も大切ですからね)久しぶりに野山のワラビを、おいしくありがたくごちそうになりました。