桜満開のなか田起し

2日は田んぼの耕起作業にとりかかりました。いずこも粘土質で土深い我が家の圃場は、予想したように土が乾きません。一部ではドジョウやタニシが圃場の溝に常にいるほど湿潤の土地なので、トラクターの車輪がいつもの年よりかなり深く土に沈みます。こういう時は、土を「掘る」というより「練る」といったほうがよい場所もあります。

▼こちらが狩りをしていた当時、ゴールデンウィークの頃は春のクマ狩り真っ最中。村内にある古くからのマタギ集落では「この週間はのがされない」と、県境の数あるクラ(崖)のいずれかにいくつかの狩り集団が向かったものでした。

そのうちの一つが天正の滝の合居川渓谷。この谷の冬から春にかけては、渓谷入り口から大中小規模の雪崩が発生、落石も春はとりわけ多く、昔から「冬の谷入りはワス(表層雪崩)で厳禁、春先はヒラ(底雪崩)に気をつけろ」とマタギの先輩たちからよく教えられたものです。

この時期は雪崩の雪と落石が道をふさぎ、危険なので車はもちろんまだ通行止め。長年の狩りや山仕事、山菜キノコ採りで山と谷の様子を知るこちらは、ここらあたりの谷の「どの時期にどこが危ないか」がほぼわかり、そういう学びの体験をもとにこの連休に渓谷へ入りました。

雪が少なかったとはいえ雪崩落ちた雪が車道をふさぐ谷は、いま天正の滝周囲よりかなり上流部までブナが萌えています。この萌え始めの葉っぱは冬眠明けのクマの大好物で、我々狩人は「クマはブナのホゲザゲ(萌芽境目)」にいると言ったものです。3日のように晴天でかつ夏のような日ならば、大森山のてっぺんや渓谷内の見通しのきく尾根で合居川渓谷を一日眺めていれば、ブナの木に上っていたり、地面を歩き回るクマたちの姿があちこちで見られたでしょう。

所々のブナを眺めたら、花芽がほどよく着いている木もありますから、このまま結実できれば今年はブナの実が平年作ほどにはなるのでしょうか。尾根とは違い雪解けの遅い斜面樹下には遅咲きのチヂザグラ(土桜・イワウチワ)がいま花真っ盛りです。期待していたトガクシショウマとシラネアオイは、なんぼなんでもここではまだ早しです。

石英斑岩の柱状節理が垂直に切り立つ「イズクラ」の崖と山桜、ブナの若葉、それにヒメマツ(キタゴヨウ)の緑が彩る春の渓谷も、秋とはまたちがった断崖の美を見せてくれます。

▼谷の山桜とともに自宅前公園のソメイヨシノやヤマザクラも満開、鉢植えのトガクシショウマやサンカヨウも咲き、我が家のシダレザクラもやっと見頃となりました。