目に留まる石垣とミズナラ大木

沼又沢の様子をきのう載せましたが、この沢、つまり国道397号線を歩いて通る時に私の目にとまるのが道路法面の石垣です。

この石垣に使われる石は、一つ一つが石工の手で割られ細工されたもの。大きさや形に一定の基準はあるでしょうが、手で細工したものですから細かく見れば一つとして同じ石はありません。それなのにこれほどきれいな石積みができる石工と石積み職人の技の巧みさは見事なものです。

写真の石は「村内産ではない、石を割り積んだ職人さんも村の方ではない」ことを今は亡き集落のBさんからお聴きしたことがあります。その故Bさんも村内では名の通った技のたつ石割職人でした。河川敷に流れ着き角のとれた大きく堅い合居川石(景勝地いずくらの柱状節理の石英斑岩。合居砕石の原石)に確か鉄楔(かなや)をいくつか打ち込み、大きなハンマーを振り下ろし石を割るBさんの姿を記憶にとどめておられる方々は少なくないはずです。

割られた合居川石はひときわ青く、Bさんの割った青い石は「国道397号のもっと上の方で使われた」とご本人からお聴きしています。子ども達の夏の水浴び、川に潜っての石拾いでは、天正の滝方面から流れて丸くなったこの青い小粒の合居川石を、よい目印として水浴び場の淵に投げ込んだもの。つまり合居川石は童たちの遊び道具でもあったのです。

国道397号線(昭和57年国道認定)といえば、それがまだ「水沢増田線」の頃の昭和31年、県境をまたぐ山脈の貫通促進決議に基づいて国が事業化し、翌32年、秋田側で起工式が行われております。私の記憶には、現合居砕石(株)がある場所の合居川と沼又沢の合流点にかかる下野尻橋の工事現場(施工業者は和賀組さんか山一組さんのどちらかだったかな)で、ガキ仲間で錆びたクギを拾い集めた思い出が濃くのこっています。クギは、「フルガネ屋(古鉄屋)」に売って小遣いにするためと、クギ打ち遊びに使うためでした。

▼山々が萌葱の前は葉っぱに邪魔されず見通しがきいて、林や沢の様子などを知るのに好都合です。山岳遭難救助にあたる人々は、春山のいまのうちに自然の地形や山と木々の様子をよく頭に入れておくことも大事で、以前は遭難者の多い須川高原などでも捜索救助のための学習踏査を残雪上で行ったものです。そろそろ引退の頃かとは思いますが、まだ村遭難救助隊の一員であるこちらは、春山歩きではいつも遭難救助のことを念頭におきます。「いざ有事の時、どこをどう歩けばよいかなど」を思案においてです。

それと合わせてこうして芽吹き前で見通しのきく山歩きで私がもうひとつ頭におくのは尾根や斜面の木々のこと。とりわけ大きなミズナラの木がどこにあるか、地面に倒れ横たわっているミズナラやブナなどの大木がどこにあるかを頭に入れておくのは、キノコ採り、撮りを趣味としている者にとってはこれも心がけの一つ。今年の春も、マイタケの出そうなミズナラ大木を新たに何本か頭に入れておきました。あくまでも「出そうな」ですが。