仙台キノコ同好会の会誌に学ぶ

このほど、仙台キノコ同好会の前会長で現在は同会の顧問を務めておられるS氏から、2月に発行された会誌(第44号)を送っていただきました。

この村で過去二回、一泊のキノコ研修会を行っている同好会でもあり、会誌や会の活動から私はいろんなことを学ぶことができます。きのこ採り、撮りを趣味のひとつとしているこちらは、今号の会誌もありがたく思いながら読ませていただきました。

今号にはS氏が同会の研修会(77名参加)で行った講演の内容が載せられており、私はそのページに注目しました。それは、キノコの中でも「食毒」について見解のちがう様々な意見があり、おかしいと思っていたホウキタケの仲間「ハナホウキタケ」について、これまでと違う解説が紹介されていたからです。

どうやらそれは、これまで「ハナホウキタケ」と呼び毒キノコ扱いされていた種について疑問をもつ方々が、いろんな鑑定や探究を経て到達したひとつの結論のようです。ただし、これまでと同じような専門家筋の見解は別にあるようですが、それはここでは省きます。

その結論とは、これまで多くのガイド本や図鑑で「ハナホウキタケ」とされ、私も毎年ここで紹介している8月はじめから9月にかけて大量に発生するピンク色の種に「ハナホウキモドキ」という新たな名がつけられていたことです。これまで「ハナホウキタケ」とされ、多くのガイドブックや図鑑では毒種扱いされていたきのこです。それが「ハナホウキモドキ」となっていたのです。

このキノコは、ごく普通にわが村では「ハギモダシ」(2~3枚目の写真)と呼びよく食べられます。「図鑑では毒種とされているが、村では、はるか昔から多くを食べていても、誰も、一度も、中毒はせず、おいしいキノコ。なぜ、それが毒種なのか?」と私はいつも疑問に思っていました。我が家では、サモダシ(ナラタケ・ナラタケモドキ)、ミャゴ(マイタケ)ナメラコ(ナメコ)、などとならんで最も多く利用されるキノコです。

そのキノコが「ハナホウキモドキ」とされているのです。S氏は、ホウキタケ類の分類研究に造詣の深いある学者の研究事例などを引きながら「……これまで食・毒の論争になってきたキノコである。私の食経験では食べられますが、まだ市民権を得られるまでにはなっていない……」としての旨を講演で語られたようで、会誌には詳しくそのことが記されております。

うれしいことに今号の同会の会誌には、S氏が講演で紹介されたのでしょう、ホウキタケの仲間たちの写真もいっぱい載せられております。S氏からご了承いただき、講演・解説の一部と各種ホウキタケの写真を(4~5枚目の写真)ここにもご紹介しておきます。最上段⑥の「ハナホウキタケ」と、最下段⑤の「ハナホウキモドキ」に注目です。

このホウキタケ一覧の写真ページには、私が毎年よく紹介する、肉厚のネズミハギモダシ(写真6枚目)「ウスムラサキホウキタケと思いますが」は載っておりません。が、同じように紹介してきた肉厚真っ赤なハギモダシが「赤いホウキタケ(ゼラチン質)」として、名はつけられずに一覧の写真ページ2段目中央⑦に載せられております。それはまだ名のないホウキタケの仲間のようで、これにも注目です。

「ハナホウキモドキ」とちがってこの名のない「赤いホウキタケ(ゼラチン質)」は、私の知る種(私の写真終わりの7~9枚目)と似ています。もし同じだとしたらこのキノコは村での発生は極めて少なく、見映えは美しく肉厚の形は見事ですが、ほかのホウキタケの仲間に比べてやや小ぶりです。幾度か食べたことはありますが、特徴はホウキタケにはめずらしく解説にもあるようにコリコリしたゼラチン質です。見栄えとはちがい、噛みごたえは今イチで、それほどおいしいとは思えないキノコです。そういうこともあって、私は食べるよりも眺めて楽しむキノコの仲間に入れることにしました。

いずれにしても、「ハナホウキタケ」と「ハナホウキモドキ」の別を含めホウキタケの仲間をこのように多く解説、載せている同好会の会誌には学ぶところ大です。今後新しく発行されるキノコガイド本や既刊ガイド本の改訂版などでは「ハナホウキモドキ」が「食べられるキノコ」として載せられるかもしれませんね。このキノコを長年食べている私には、どうせなら、「モドキ」とかではなくもっと別の名でもいいような気もしますけれども。なんともキノコの世界は奥深しです。