雪上の仙北街道(その2)

ブナの林を縫いながら下り始めてすぐ、北西から南東にまっすぐ向かう足跡ひとつ。急斜面を下る箇所では、クマ特有の後ろ足を滑らし気味にした二本の線状の跡も雪上にくっきり。林立するブナにも、昨年秋につけられた新しいツメの跡が随所で目に入った。

足跡は2つで、跡の大きさからして一頭は100㎏をはるかに超すだろう大グマ、前夜から朝にかけて歩いたらしい爪跡の新しい一頭も80㎏から100㎏近いクマだろう。この日は、堅雪でも林の中は朝から雪に足がややぬかるので足跡がくっきりと残り、向かった方向も、大きさもほぼ確実に推定できる。

狼沢方面の越冬穴から出てきたのか、普通なら明通方面の雪消の早い日向斜面にむかえば野草の新芽や昨年のドングリが食べられるだろうが、2頭とも岩ノ目沢を横切り丈ノ倉平(ジョウノグラディ)から胆沢川下流部、もしくは小出川下流部方面に向かう跡だ。足跡が新しい場合、普段の私なら足跡を逆にたどる逆追跡で「クマが出た穴」をさがすのだが、この日は帰りの体力(脚力)のことも考えそれは止めた。

岩ノ目沢は途中で大小2つに大きく分かれていて、仙北街道・丈ノ倉のてっぺんに向かう最短距離をとるには小さい方の沢をこえなければならない。しかし今年は雪がまだ多く、沢はほとんどが雪でふさがれていてどこからでも越えられる。

広大なブナの森に吾ひとり。景色に見とれ「いいなァ、いいなァ」とつぶやきながら丈ノ倉の高見をあおぐ尾根の直下まで来た。最後の急登、滑らないように一歩ずつ足もとを固め、今年もまたここに到着。時間はまだ早く10時を少し過ぎただけ。

ここは夏の仙北街道踏査でよく歩く道。いつもの春ならもっと尾根筋の道が出ているのだが、今年はやはり雪が多く土の街道はわずかしか露出していない。毎年見られる道脇のカタクリも、花どころかまだ新芽すら見あたらない。

眼下の岩ノ目沢右岸ジョウノグラデイ(丈ノ倉平)の美林と、明通沢上流部に広がるブナ原生林は、雪上の春山だからこその眺望が楽しめる。北東に焼石連峰、西に五里台集落と鳥海山、南に東山や栗駒を望みながらそのまま街道を小出川方面にむかったが、いつもご対面するクマの越冬穴も雪が多く、今年はまだ穴口に姿も見えず。林では雪に足がかなりぬかるので、戻りの難儀を考え目的地まで向かわず途中で引き返すことを決断。

戻りになったら空の青さも多く、陽射しもまぶしくなり、ブナの林相も、焼石連峰の遠景も朝とはちがった明るい趣を楽しめた。

▼きのうは、任期満了にともなう村議選で改選された新議員へ当選証書の交付が役場内で行われました。私もふくめ再選された現職も、新人と同じように決意を新たにしての活動にまた全力投球です。

現職の任期は今月29日まで。30日からは新しいメンバーによる議会の構成となりますが、初めてとされる10連休などへの配慮もあって、初議会は来月7日開催で招集されました。